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48 マルコさんの家

last update 最終更新日: 2026-01-09 21:40:48

 車でおよそ十五分ほど。マルコさんの住む伯爵家の屋敷があった。

 二階建の、茶色い外壁の大きなお屋敷で、緑色の屋根が特徴的だ。

 車を降りて、俺は屋敷を見上げる。

 結構古い屋敷に見えるけど、マルコさんちって由緒ある家庭なのかな。

 貴族になれる基準とか全然知らねえけど。

 屋敷に見とれていると、マルコさんの声が響いた。

「ルカ君、こっち!」

 ハッとして声がした方を見ると、マルコさんが屋敷の玄関を通り過ぎた先で手招いているのが見えた。

「こっちに僕の部屋があるから」

 と言い、彼は屋敷の向こう側を示した。

 ここからじゃ見えないけど別邸があるのかな。

 俺は頷き、

「はい」

 と返事をして彼を追った。

 俺がマルコさんに並ぶと、彼は歩き出す。

「本や資料が多いから本邸には置ききれなくて、別邸の方を使ってるんだよね」

「別邸があるんですか?」

 言いながら俺は辺りを見回す。

 庭も広いし、なんていうかこれ、社会の資料集とかで見た、左右対称のイギリス庭園に似てる。

「すごい広いですね」

 感心して言うと、マルコさんが声を上げて笑う。

「君は王城に住んでいるじゃないか。それに比べたらたいしたことないよ」

「いや、それはそうかもですけど……王城は論外ですよ。まだ全部、周った事ないし」

「そうなの? 毎日冒険できそうだけど」

 そうかもしれないけど、ハタチ超えてそれは痛々しいんじゃないかな。

 そう思いつつ俺は首を振る。

「さすがにそこまでしないですよ。子供じゃないし」

「そうなんだ。夏休みで何してるの?」

 う……そう言われると俺、何してるだろう。

 すぐに思いついたのはエドとのことだ。

 さすがに朝から思い出すことじゃないから俺はとっさにその思い出を消して、何して他か思い出す。

 えーと、えーと……

 そしてやっとの思いで絞り出す。

「本読んだり……?」

 って言いながら首を傾げた。

 本は読んでる。王宮だから本はたくさんあるんだよな。

 でもそれ以外に何してるっけ……悲しくなるほど何にもしてない。

 せめてバイトしたりできたらいいのに、さすがにそれは許されないんだよな。とりあえず王族だから。

 俺の答えに、テンション高めの声でマルコさんが言った。

「本って何読んでるの?」

「いや、色々。小説も読むけど、俺、全然この国の歴史とか知らないですから、歴史や神話
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  • カンタレラ〜毒公爵の甘い愛に溺れる〜   48 マルコさんの家

     車でおよそ十五分ほど。マルコさんの住む伯爵家の屋敷があった。 二階建の、茶色い外壁の大きなお屋敷で、緑色の屋根が特徴的だ。 車を降りて、俺は屋敷を見上げる。 結構古い屋敷に見えるけど、マルコさんちって由緒ある家庭なのかな。 貴族になれる基準とか全然知らねえけど。 屋敷に見とれていると、マルコさんの声が響いた。「ルカ君、こっち!」 ハッとして声がした方を見ると、マルコさんが屋敷の玄関を通り過ぎた先で手招いているのが見えた。 「こっちに僕の部屋があるから」 と言い、彼は屋敷の向こう側を示した。 ここからじゃ見えないけど別邸があるのかな。 俺は頷き、「はい」 と返事をして彼を追った。 俺がマルコさんに並ぶと、彼は歩き出す。「本や資料が多いから本邸には置ききれなくて、別邸の方を使ってるんだよね」「別邸があるんですか?」 言いながら俺は辺りを見回す。 庭も広いし、なんていうかこれ、社会の資料集とかで見た、左右対称のイギリス庭園に似てる。 「すごい広いですね」 感心して言うと、マルコさんが声を上げて笑う。「君は王城に住んでいるじゃないか。それに比べたらたいしたことないよ」「いや、それはそうかもですけど……王城は論外ですよ。まだ全部、周った事ないし」「そうなの? 毎日冒険できそうだけど」 そうかもしれないけど、ハタチ超えてそれは痛々しいんじゃないかな。 そう思いつつ俺は首を振る。「さすがにそこまでしないですよ。子供じゃないし」「そうなんだ。夏休みで何してるの?」 う……そう言われると俺、何してるだろう。 すぐに思いついたのはエドとのことだ。 さすがに朝から思い出すことじゃないから俺はとっさにその思い出を消して、何して他か思い出す。 えーと、えーと…… そしてやっとの思いで絞り出す。「本読んだり……?」 って言いながら首を傾げた。 本は読んでる。王宮だから本はたくさんあるんだよな。 でもそれ以外に何してるっけ……悲しくなるほど何にもしてない。 せめてバイトしたりできたらいいのに、さすがにそれは許されないんだよな。とりあえず王族だから。 俺の答えに、テンション高めの声でマルコさんが言った。 「本って何読んでるの?」「いや、色々。小説も読むけど、俺、全然この国の歴史とか知らないですから、歴史や神話

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  • カンタレラ〜毒公爵の甘い愛に溺れる〜   43 嫉妬?

     エドの屋敷について、俺は空を見上げる。 太陽の主張が強くて暑い。 日本の夏みたいな四十度を越えるような暑さじゃないのはありがたいけど、ゲームの中なのにわざわざ夏は暑いって設定しなくてもいいのにって思う。 そんな俺の背中にエドの声がかかった。「ルカ、中に入ろう。外は暑いし」「あ、うん」 俺はびくっとしたあと慌ててエドの後を追いかけて屋敷に入った。 エドの部屋に入るとすぐに、メイドさんがお茶とお菓子を持って来てくれた。 お茶は、冷たいハーブティーだ。透明なグラスに氷が浮いている。 お菓子はクッキーとマフィンだった。どれもおいしそうだ。 俺はグラスを手に持って言った。「いただきます」 ひやっとするグラスが気持ちいい。 お茶を飲んでいると、隣にぴったりと座るエドが言った。「この一週間、何してたの?」「え? あぁ、妹に付き合って博物館行って、あと買い物行ったりしたくらいかな。暑いからあんまり外、行ってない」 そう答えると、エドはふっと笑った。「確かに暑いもんね。博物館行ったんだ。宿題で?」「あぁ、うん。そうしたらマリアの先生に会って。宿題なのにマリア、先生に手伝ってもらったみたいで」 笑いながら言うと、エドは苦笑する。「そんなことあるんだ。なかなかたくましい妹さんだね」 確かにそうだな。 じゃないと乙女ゲームのヒロインなんてできねーのかもしれない。「あれ、そうなるとルカはその間何してたの?」 不思議そうにエドが言い、俺は思わずびくっとした。「え? あ……」 そう言ってからまずい、って思う。だってこんな反応したらぜってー何かあったってバレるじゃん。 びくびくしながらグラスをテーブルに置いて隣を見ると、不審げに目を細めてクッキーを抓んでいるエドの姿が目に入る。 やばいこれ、なんか疑われてる? いや、疑うって何だよ。何にもやましいことないのに。 そう思って俺はマルコさんの事を思い出す。 なんか変な人だったし、唇に触られたけど……変な意味、ないよな? 焦って黙り込んでしまった俺を見つめ、エドはクッキーを口にする。 バリ、バリ、と乾いた音が響いてる。 そしてエドは静かに言った。「何かあったの」 そして俺の膝にそっと手を置く。「いや……えーとあの、博物館の展示会のスタッフで大学院の人と知り合って……」「へえ。そ

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